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研究

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生体内のゴミ掃除システムを解明する
生体の主成分はタンパク質である。合成されたタンパク質は生涯生体内で働くのではなく、ほとんどのタンパク質は数日程度で分解され、新しいタンパク質と入れ替わることで生体恒常性が保たれる。しかし、タンパク質ストレスや遺伝子変異、加齢など様々な要因により、異常なタンパク質が生じてゴミのように蓄積すると、アルツハイマー病などの神経変性疾患や、細胞や組織の機能低下や肌の老化、などなど様々な生体の障害の原因になると考えられている。一方で生体内には異常タンパク質を分解除去するゴミ掃除システムが存在する。しかし、生体内のゴミ掃除システムの詳細はよくわかっていない。私たちは生体内のゴミ掃除システムを解明すべく、分子細胞生物学・生化学的な実験を主軸に、哺乳類の細胞培養系やマウスを用いて、タンパク質品質管理システムの研究を進めている。

タンパク質品質管理機構
 
ヒトの遺伝子は約2万個あり、それぞれが固有のタンパク質へ合成されて働く。合成されたタンパク質は、それぞれの正常な形に折りたたまれ、正しい立体構造を形成して機能する。しかし、損傷や老化などによって立体構造が壊れると異常なタンパク質へと変貌する。異常タンパク質が蓄積すると、細胞や臓器が正しく機能できなくなり、様々な疾患や老化を引き起こす。このような異常タンパク質の蓄積を防ぐために、生体内には異常なタンパク質を認識して、タンパク質分解へと導くタンパク質品質管理機構(Protein quality control system)が存在する。

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研究目的:タンパク質を分解する分子メカニズム・生理的役割を解き明かす。
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ほ乳類におけるタンパク質は、細胞内で働くタンパク質、細胞内小器官で働くタンパク質や、さらに細胞外領域に分泌され働く血漿タンパク質や、コラーゲンなど細胞外マトリックスなど、その形や存在する空間など多種多様に異なる。そのためそれぞれの異常タンパク質に対応した認識機構によって分解へ導かなければならない。如何なるメカニズムによってそれぞれの異常タンパク質が認識され、分解へと導かれているのか?多くの解くべき課題が残っている。本研究室では、血液・細胞外異常タンパク質を細胞外シャペロンやクリアランス受容体を介してエンドサイトーシス・リソソーム系によって分解除去する細胞外タンパク質分解機構や、細胞内タンパク質やオルガネラを分解除去するオートファジー・リソソームシステムについて、ほ乳類培養細胞やマウスを用いて調べ、タンパク質品質管理システムの総合的な解明を目指している。

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​研究成果 (selected publications)

 

Extracellular protein degradation system
 

Itakura E#, Chiba M, Murata T, Matsuura A. (#single corresponding author)
Heparan sulfate is a clearance receptor for aberrant extracellular proteins.
J Cell Biol. 2020 Mar 2;219(3). pii: e201911126. doi: 10.1083/jcb.201911126.

血液など細胞外環境の異常タンパク質を分解する機構はよくわかっていない。細胞外シャペロンClusterinに着目したところ、Clusterinが細胞外異常タンパク質の分解に関わることを見出し、さらに細胞膜上ヘパラン硫酸を受容体として、Clusterinと異常タンパク質複合体がリソソーム分解へ導かれることを発見した。CRED経路による細胞外タンパク質品質管理経路を導き出した。

プレスリリース

 

Tomihari A*, Chiba M*, Matsuura A, Itakura E.

Protocol for quantification of the lysosomal degradation of extracellular proteins into mammalian cells.

STAR Protoc. 2021 Nov 23;2(4):100975. doi: 10.1016/j.xpro.2021.100975. 

​細胞体タンパク質のリソソーム分解を定量的に測定する方法が乏しかった。リソソームプロテアーゼ耐性の蛍光タンパク質を用いた取込みアッセイ法を開発した。

Tomihari A, Kiyota M, Matsuura A, Itakura E.
Alpha 2-macroglobulin acts as a clearance factor in the lysosomal degradation of extracellular misfolded proteins.
Sci Rep. 2023 Mar 28;13(1):4680. doi: 10.1038/s41598-023-31104-x.

Clusterin以外の細胞外シャペロンが細胞外タンパク質のリソソーム分解に寄与するのかどうか調べた。α2macroglobulinが細胞外変性タンパク質を分解へ導く因子であることを発見した。

プレスリリース

 

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Intracellular protien degaradation system (autophagy)

Takayama K, Matsuura A, Itakura 

Dissection of ubiquitinated protein degradation by basal autophagy

FEBS Lett. 2017 May;591(9):1199-1211

恒常的オートファジーではユビキチン化タンパク質の分解は生じていないことを見つけた。

Tatsumi T, Takayama K, Ishii S, Yamamoto A, Hara T, Minami N, Miyasaka N, Kubota T, Matsuura A, Itakura E# & Tsukamoto S# ( #co-corresponding authors)
Forced lipophagy reveals that lipid droplets are required for early embryonic development in mouse
Development 2018 Feb 23;145(4). pii: dev161893. 

強制的リポファジーを開発し、マウス受精卵初期発生時に脂肪的分解が関与することを発見した。

Ishii S, Matsuura A, Itakura E.
Identification of a factor controlling lysosomal homeostasis using a novel lysosomal trafficking probe.
Sci Rep. 2019 Aug 12;9(1):11635. doi: 10.1038/s41598-019-48131-2.

リソソーム分解活性を定量解析するLysosomal-METRIQプローブを開発した。

​プレスリリース

Uesugi R, Ishii S, Matsuura A, Itakura E.
Labeling and measuring stressed mitochondria using a PINK1-based ratiometric fluorescent sensor.
J Biol Chem. 2021 Nov;297(5):101279. doi: 10.1016/j.jbc.2021.101279.

ミトコンドリアストレスプローブMito-Painを開発し、ミトコンドリアストレス関連化合物を発見した。

プレスリリース

Date Y, Matsuura A, Itakura E.
Disruption of actin dynamics induces autophagy of the eukaryotic chaperonin TRiC/CCT.
Cell Death Discov. 2022 Jan 25;8(1):37. doi: 10.1038/s41420-022-00828-6.

アクチン重合異常時にTRiC複合体がオートファジーにより分解されることを見出した。

Ishii S*, Chino H*, Ode KL, Kurikawa Y, Ueda HR, Matsuura A, Mizushima N, Itakura E.
CCPG1 recognizes endoplasmic reticulum luminal proteins for selective ER-phagy.
Mol Biol Cell. 2023 Apr 1;34(4):ar29. doi: 10.1091/mbc.E22-09-0432.

CCPG1が小胞体内腔の異常タンパク質を直接認識しER-phagyを導くことを発見した。

 

 

Chiba M, Yanagawa M, Oyama Y, Harada S, Nemoto T, Matsuura A, Itakura E
A novel autophagy inhibitor, bTBT, disturbs autophagosome formation. 
Autophagy Rep. 2023 Apr 6;2(1):2194620.

​​オートファジー阻害化合物bis-tributyltinを同定した。

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